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8月 2016

痛みの記憶

多くの人が抱える痛み。人によって原因は様々で治療薬も多様化してきました。 ある日の外来のひとコマ。 先生  「Aさんの検査の結果は何も異常がなかったよ。脳神経外科も検査は異常なしだし、整形外科的な所見もないし、血液検査でも内科的な異常はない。からしてAさんは健康ということです。」 (Aさんは足を中心とした体の痛みと痺れで5年も悩んでいるそうで来院されました。) Aさん  「じゃあなんで私の足は痺れて痛いんですか?5年も苦しんでいて夜も眠れない程なのに。」 先生  「 脳が誤作動 をしているんですよ。痛みを生むきっかけはあったかも知れないけれど、体は元気になったのに脳が痛みの記憶で今もそう感じさせていると考えます。理由はAさんが問題なく日常生活をおくれていること、考えうるあらゆる検査でも異常がないことです。」 (Aさんは痛みが良くなると言われることは、整体、マッサージ、漢方、ヨガ、体操、ダンスなど色々試してきたそうで今もヨガとダンスと体操は続けているそうです。痛み止めや漢方薬など薬はほとんど効果がなく、家族や親戚、友人などから色々な情報が集まり、悪い病気ではないかと心配が膨らむ日々のようです。) Aさん  「整体では骨が曲がってると言われました。それが原因では?」 先生 「レントゲンもMRIも異常なしです。多少の歪みは誰にでもありますし、Aさんの場合はそれが原因とは考えにくいです。現に骨が原因だとしたらヨガやダンスは痛くてできません。原因がないので痛み止めが効かないのも証拠といえます。」 Aさん  「じゃあ、私はどうすればいいんですか?」 先生  「痛みを理解して脳の誤作動を少しずつ修正していくことです。今のAさんの脳は痛みのことでいっぱいです。しかし、ヨガやダンスなど体を動かしたり楽しいことをしている時は気が紛れて痛みを感じなくなる。また夜にじっとして考えると痛みのことで頭がいっぱいになり眠れなくなる。修正するには体を動かしたり楽しいことをたくさんして、痛みの記憶を嬉しい、楽しい記憶で置き換えていくことです。それには周りの方の情報も不安を大きくし妨げになることがあるのであまり聞かないことです。Aさんは健康なので自分の体を信じて自信をもって元気に楽しく過ごすよう心掛けて下さい。薬もないと不安であれば処方しますが今のAさんには必要ない

夏の養生

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夏の養生 夏バテ は皆さんご存知のように夏の暑さに負けて起こる倦怠感や食欲不振などの不調です。暑さにより不眠等で体力が低下するせいもありますが、多くは冷たいものを摂り過ぎ胃腸が冷えて機能が低下することが最大の原因です。 江戸時代の庶民の為に書かれた「養生訓」という本にも 温かいものを食べ冷たいものを避ける ように、夏は特に注意が必要なことが書かれています。 現代は冷蔵庫やエアコンの普及でこの養生がかなり難しいものになっています。職場の冷房が強すぎて冷えてしまうので電気毛布が必須という患者さんもいらっしゃいます。 東洋医学において 胃腸の機能 と深い関りがあるのが「脾」という臓です。脾は湿を嫌うとされ、また冷えると正常に機能できなくなります。冷たくて水分が多い食事、冷たい麺類、生野菜、冷やした果物、アイスなどまさに夏に多く摂りがちな食事です。 じゃあ何を食べたらいいの?と聞かれますが、体を冷やさないもの、よく噛んで食べるものです。 冷たいものが続いたら日に1度は温かいメニューを入れたり、食事は飲み物で流し込まずよく噛んで食べます。唾液と混ざることで消化が良くなり胃腸の負担が軽減します。 中でも 苦 みのあるものは夏バテに有効です。身体の余分な熱を冷まし、食欲を促進しさせ、湿を捌く作用があります。 例えば苦瓜、菊花、紫蘇、緑茶、麦茶、コーヒーなどです。 カフェインが気になる方はタンポポコーヒーやハブ茶、菊花茶もおすすめです。 9月9日の重陽の節句に菊の花を食べるというのも何か関係があるような・・・。面白いです。 胃腸の水浸しと冷えを防ぐことは、夏だけではなくて秋口からの体調に大きな影響があります。 「養生訓」にも夏に冷たいものを摂り過ぎれば秋には必ず瘧痢を病むと書いてあります。瘧痢とは発熱や下痢の症状を起こす感染症や食中毒のことで、真夏より秋口に増えてくるのは夏の不摂生が原因で胃腸機能の低下や免疫力の低下が関係していると考えられます。 自分で水浸しと冷えを探すには?? 鏡に向かいあっかんべーっとしてみて下さい。舌の側面に歯の跡がついていたり、表面の白い苔が厚くなっていたら水浸し注意報です。 お腹のおへそ周りを触ってみて他の部分より冷たい場所が見つかったら冷え注意報です。 見つかった人は養生とセルフケアをおすすめしま